アレクシー・ロジャンスキー 「月」

ヴィオラは、不思議な響きをもっている。
弦楽器の中では、派手なヴァイオリンと低音のチェロ・コントラバスの間にはさまれて、いちばん目立たない存在。けれど、ひとたびソロになると、この楽器がなんともいえない響きをもっていることに気づく。
それは、柔らかく、あたたかく、心が満たされる響きだ。
パリ・オペラ座で演奏するアレクシー・ロジャンスキーのヴィオラの音色は、とても芯が強い。悲しいことがあった人に、「大丈夫だよ」と語りかけてくるような、そんな音。今回の「日本のうた」を集めたアルバムでは、誰もが一度は耳にしたことのある懐かしいメロディが、強く優しいアレクシーのヴィオラによって歌われていく。田中利光・奥村真吾・長谷川美喜子の3人による編曲も、彼のヴィオラの強さと優しさを十二分に発揮する出来映えとなっている。松田圭子の寄り添うようなピアノ伴奏もいい。 このアルバムを聴いていると、心の中にそっとしまっておいた、いちばん美しい思い出がよみがえってくる。誰にも話さず、大切に守っていたもの。アレクシーのヴィオラは、自分にとっていちばん大切なものを教えてくれる、そんな力をもっているのかもしれない。
室田尚子(音楽ライター)
 

 

ピアノ奏者との稽古の度に、私は未知の何かを発見するような感覚を覚え、また日本の音楽を通じて、日本の魂の一部を表現することに大変感動していました。これらの歌曲は、時代、地方も様々であり、まるで日本人の感性への旅へと誘っているようです。多くのものはノスタルジックな印象を受けますが、それらは人生に於ける美しい思い出をたどりながら、容赦ない時の流れをより良く甘受して行ける様、我々に手を 差し伸べてくれているように感じます。もろい存在である人間と、恩恵を施しながらも時には荒々しい自然との間に存在する深い絆の重要性と、最も純粋な感情に与えられる価値の重要性を、私は少しずつ感じてゆきました。存在の滅び行く事象と、自然、宇宙の巨大な輪廻の永久との対比に、切ない程に心を揺さぶられる日本人の魂にとって、儚さと純粋さへの崇拝は至高なものなのかもしれないと。なぜならその崇拝は、いくつかの人生のなかの出来事において、唯一で且つ貴重な価値を神秘的に与えているように思うのです。

Alexis Rojanski



1.竹田の子守唄  日本古謡 奥村真吾編曲
2.からたちの花  山田耕筰作曲1923年 長谷川美喜子編曲
3.早春賦  中田章作曲1913年  田中利光編曲
4.蘇州夜曲  服部良一作曲1940年  長谷川美喜子編曲
5.おぼろ月夜  岡野貞一作曲1914年  田中利光編曲
6.さくらさくら  日本古謡  田中利光編曲
7.宵待草  多忠亮作曲1918年  田中利光編曲
8.浜辺の歌  成田為三作曲1918年  田中利光編曲
9.砂山  山田耕筰作曲1922年  長谷川美喜子編曲
10.椰子の実  大中寅ニ作曲1936年  田中利光編曲
11.夏の思い出  中田喜直作曲1949年  奥村真吾編曲
12.もみじ  岡野貞一作曲1911年  田中利光編曲
13.赤とんぼ  山田耕筰作曲1921年  田中利光編曲
14.母が歌ってくれた子守唄  日本古謡  田中利光編曲
15.故郷  岡野貞一作曲1914年  田中利光編曲
16.荒城の月  滝廉太郎作曲1901年  田中利光編曲   
 
 


1969年パリに生まれ、7歳より音楽を始める。国立パリ高等音楽院、ジェラール.コセ氏のクラスにおいて、ヴィオラ科を一等賞にて卒業する。国立フランスオーケストラの一員として、ラジオフランス、シャンゼリゼ劇場などで演奏、またシャルル.ドゥトワ指揮のもと、中国、韓国、日本、アルゼンチン、ブラジルと国際遠征に参加。1996年、国立パリオペラ座オーケストラへ入団、そして三年後に同楽団ソリストになる。ジェームス.コンロン、小沢征爾、クリストフ.フォンドナニ、ブラディミール.ジュホブスキー、パレリー.ガルギエフの指揮の元、オペラガルニエ、オペラバスチーユにて演奏する。オーケストラのソリストにより行われる室内楽のコンサート、またカルテット.ハゾモフスキー.パリのヴィオリストとして録音へ参加。数々のプライベート.リサイタルを日本において行う。そして2005年、松田圭子と共に日本のメロディの録音を行う。

 

5歳よりピアノを始める。埼玉県立大宮光陵高等学校音楽科を経て、武蔵野音楽大学器楽学科を卒業する。川島みどり、坂井玲子、ThomasYeeの各氏に師事。東京国際芸術協会、国際芸術連盟、全日本演奏家協会などのオーディションに合格。TIAA全日本クラッシック音楽コンサートにおいて審査員賞受賞。ノーヴィ国際音楽コンクールにて第3位。日本クラッシック音楽コンクール全国大会にて入選。万里の長城国際音楽コンクールにて第3位。イタリアピアノコンコルソにて優勝、ヴェネツィア大賞受賞。同大学支部定期演奏会、日本の音楽展などに演出するほか、伴奏者として北京国際クラリネット音楽祭へ参加。2005年、アレクシーロジャンスキーと共に日本のメロディの録音を行う。